なで肩の狐

1999/ビスタサイズ

(99/6/13 V)

原作・花村萬月 脚本・吉川次郎

撮影・安藤庄平 照明・石丸隆一

美術・尾関龍生 音楽・安川午朗

監督・渡辺 武

 ”なで肩の狐”と呼ばれて恐れられたがいまはカタギの男(椎名桔平)は腐れ縁の女(洞口依子)を組長代行(鶴見辰吾)に人質にとられ、組を裏切って大金を持ち逃げした昔の仲間(哀川翔)を探し出さなければならないはめになるのだが、その行方には更なる陰謀が待ち構えていた。

 という物語はいかにもVシネマらしいヤクザ映画だが、近年の渡辺武の興味はVシネマにありがちな組織闘争劇や超人的なヒットマンを扱った単純明快(誉め言葉だ!)なアクション映画よりも、アクションを交えた中年男(この作品の場合35歳だが)の心理的な成長や再生を描く抒情的な作風に変わってきているようだ。Vシネマでこうした企画が通りやすくなったのは、望月六郎などの活躍のおかげもあるのだろう。

 昨年の「フリージア」ではそれがかなりの成功を収めていたのだが、桂千穂も指摘するとおりそのために罪もない人々が何人命を落としているのかという非難も招くことになっていた。

 そのことはこの作品でも通底しており、椎名桔平ひとりが生き返るために一体何人の屍を築かねばならなかったのかと考えると、ラストシーンがあまりに太平楽に見えてしまうことになるだろう。もっとも今度は死んだのは生粋のヤクザ者たちだけだとはいえ、随分惨い殺され方してたことを思い出すと、あまりに凶悪無惨なその男に再生する資格があるのか疑問を感じないわけにはいかない。

 しかも、まるで「第三の男」そのままの逆転劇も作りすぎであまりに作為的で、しかもアバウトすぎるし、中盤のアクションシーンにもあまりやる気が感じられない。

 あきらかに、渡辺武はVシネマの枠組みを超えた新しいフィールドを求めているのだ。そろそろ渡辺武にもノンアクションの企画が必要なのではないか?

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