陽炎4

1997/ビスタサイズ

(98/11/25 V)

脚本・田村 恵

撮影・宮島正弘 照明・中岡源権

美術・西岡善信 音楽・栗山和樹

 監督・井上 昭

主人公の女博徒(高島礼子)は流れ者のやくざ(柴俊夫)と愛し合い、敵対する組織を一つに束ねて全面戦争を回避しようとする彼の気概に打たれて協力する。密かに高島を慕う代貸(本田博太郎)が進んで捨て石となることで、計画は成功したかにみえたが・・・。

 美術が西岡善信で照明が中岡源権、監督は井上昭という旧大映京都撮影所の重鎮がスタッフに参加するという、今時夢のような企画だったりするのだが、西岡善信がプロデュースを兼任する映像京都制作作品ならではの贅沢さだ。

 劇場用映画と言うよりも、やはり予算規模的にはVシネマに分類すべきだろうが、作品的にはその平均的な水準は確実に達成されている。映画と呼ぶには少々粗末とはいえ、ステージ撮影とロケーションの組み合わせの贅沢さは、Vシネマの範疇を超えている。

 しかし、中岡源権の照明は、宮川一夫や森田富士郎と組んだ映画での作風と大きく様変わりしており、人物の輪郭をくっきり浮かび上がらせる超古典的なライティングと同時に原色のライティングなども試みているのだが、成功してはいないようだ。中岡源権といえば、宮川一夫と組んだ座頭市ものや、特に森一生の「怪談蚊喰い鳥」なんて、コントラストの強いライティングで極めて見事な闇を作り出した大ベテランなのだが、まあ、いまだ現役でスタッフとして活躍しているだけでありがたいような気がする。これが古典芸能なら、間違いなく人間国宝だよ。

 ある意味で、この作品はキャスティングが全てである。高島礼子はいいとして、柴俊夫、高橋長英、中村敦夫、大門正明、本田博太郎という異例の顔ぶれが揃うだけで観る値打ちはあるだろう。

 我らが本田博太郎は、やはり往年の岸田森を思わせる、ヒロインへの秘めた想いを抱いたまま横死する武闘派やくざを演じて独壇場の活躍。しかし、途中であっさり消えてしまうのは、もったいない。役柄によって髪型を変えるのは例のごとくとして、今回は髭で変化を狙っている。常に役作りに工夫を忘れないこの姿勢こそ、岸田森の精神を正しく受け継いだ証拠であろう。松田優作は死しても息子を残したが、岸田森の魂は、何故か縁もゆかりもないはずの博太郎に継承されているのだ(共演してるが)。ここ数年京都と東京を股に掛けて2時間ドラマやVシネマ、東映映画等に出まくっている博太郎先生だが、岸田森のように自滅しないことを祈りたい。末永い活躍を望む。

 ただ、この作品の最大の欠点は高島礼子演じる主人公不知火のおりんに、キャラクターとしての魅力が乏しいことで、シリーズ化されるほどの目新しいキャラクター造形の跡は見られない。このシリーズが一般的に認知されないのは、この主人公の造形に一工夫足りないためだろう。
 

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