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| その晩、六画塔にお世話になった。 例の、この世界に迷い込んだ因縁深い扉をあけ、 彼等は黙って真っ直ぐに本棚へと向った。 驚くべきことに、本棚がからくり扉となっており、 重苦しいキリキリと軋む音を立てながら廻すと、細い階段が下へと、 螺旋を描きながらかなり急な角度で続いていた。 外から見る限り、ぽつんと一軒建ちはだかる六画塔に このような地下が存在するなどとは、およそ想像もつかない。 20段ほど降りただろうか、狭い階段の踊り場に、 純鉄製と思われる西洋鎧が待ち受けていた。 不気味さにたじろぎながらも立ち止まり、 思わず鎧の顔面部、目の辺りを開けてみた。 --- 黒い空洞だった。 「・・誰も入ってないな、当たり前か」 などと独り言を呟きながら、 慌てて老婆と青年を追って階段を進んだ。 階段を降りると赤い絨毯が敷かれた廊下があり、 廊下の両側には何部屋かが存在している。 幸い、そのうちの一室から廊下に向って、 明かりが三角に漏れていたため、彼等が居る部屋が分かった。 おそるおそる、だが慌てて部屋に身を投じた。 Lの字に置かれたベルベット地のソファーと、暖炉、骨董品、 その隣に揺り椅子が一つ、老婆が穏やかな表情で座っていた。 明かりの元で見ると、老婆はネグリジェを纏い、銀の髪留めをし、 元の世界の昔であれば、西洋被れと世に言われる洋装であり、 深く刻まれた皺と、窪んだ眼差しにさえ、落ち着いた品格があった。 「気兼ねせずに、休まれたらよろしい」 ゆっくりとそう言い、目を細めて微笑む姿は、 細い線とは裏腹に、人を安心させる力さえ感じた。 やがて若者がグラスを3つにウィスキーと氷、 さまざまなドライフルーツを持って現れた。 --- その時はまだ、実際、不可解に思うところまで気がまわらなかった 六角塔には、暖炉があるのに、煙突がなかったのだ --- --- continued --- |